【連載】痛みをとる技術【第8弾】

原因がはっきりしない慢性的な痛みについても同様です。個人の医者がその原因を執念深く突き詰めることは稀です。役割分担として、医者の仕事は、とりあえず痛みを感じなくさせることなのです。全てにおいてそうでしょう。熱が出ていれば解熱剤。頭痛の時は痛み止め。細菌やウィルスに感染すれば抗生物質。悪くなったモノを取り除くことが仕事であり、悪くならない方法は誰も懇切丁寧には教えてくれないのです。それがこれまでの医者の仕事だったのです。これはあくまで西洋医学的な考え方で、東洋医学は未病の段階で見つけて治す、という概念があります。痛みをとる技術は、まだ自覚症状のない未病の筋肉、筋膜などを発見する方法なので、東洋医学寄りです。西洋、東洋、どちらが良い悪いの問題ではなく、その人、その時々の状態にとって、より有効な手段を柔軟に選べるシステムと、それを賢く選択できる医者と患者の心の有り様が大切なのです。

慢性的に痛みが出ている組織は、本来の機能を失っています。それは怪我からの回復時に、怪我を庇った動きや姿勢に合わせて、細胞の入れ替えが進んでしまった結果です。また長時間同じ姿勢をキープしていれば、慣れない時期は痛みやダルさを覚えるモノですが、それが日々続いていると、邪魔な痛みやダルさを感じさせないよう、従来あった姿勢から徐々に変形させつつ細胞の入れ替えが進みます。肩の巻き込みや猫背などはその最たるものです。短期的、表面的には動的平衡に見えますが、長期的、内部的には動的不平衡です。昨今のスマホ依存症による様々な健康被害の引き金となっているのが不良姿勢ですが、たった10年で、多くの人の身体を異形化させてしまうテクノロジーの進歩が、私には怖くてなりません。うなじよりやや下の肉がポコッと膨らんで、顎が前に出た姿勢になっている人は要注意です。テクノロジーの進歩は止められません。元々開発者に悪意はないでしょうし、我々ももっと便利な生活を望んでいるのですから。だからこそ、その進歩にただ身を委ねるのではなく、きちんとその長所と短所を読み取って、時には立ち止まり、時には逆行して、節度ある使い方をする必要があるのです。それは個人の自由であり、責任です。
以上。徐々に悪くなっていた組織の機能を取り戻すのですから、絶対的に時間は必要なのです。目安としてザックリ3ヶ月と言っているだけで、それより早く治る場合もあるでしょうし、数年かかる場合もあるでしょう。失われた機能を取り戻すエクササイズを日々積み重ねていくことで、細胞が新しく入れ替わっていく時に、少しずつ機能も取り戻さ、痛みも軽減してきます。これは事実です。しかし機能が失われたままの状態で細胞が入れ替わっても、根本的な改善にはいたりませんし、痛みが再発する可能性も高いでしょう。これも事実です。
自分でやるしかないのです。その覚悟をお持ちください。また、より早い回復を望むなら食事内容も考えなければなりませんが、その話はまたいつか。

本コラムの執筆者
生西 聖治

ボディメイク&ボディケアハウス
代表:生西 聖治
一般社団法人日本トレーナー協会代表理事

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