格闘家のための山田式心拍トレーニング

どういうジムワークをすればいいのか?
単にむちゃくちゃに暴れても心拍数は高くはなりにくく、維持もできません。また人間ですから意識の問題も大きく、例えば「3分死ぬ気で叩け」と言われるのと、「10秒だけ思いっきり叩け」というのでは絶対に強度が違ってきます。
50mのスピードで400mが走れないように、効果のあるトレーニングをおこなうためには強度と運動時間とレスト(休憩)にこだわらなければなりません。走るなら同じ400mでも、1分と1分10秒なら1分のほうが強度が高い。他にも坂道にしたり、休憩時間を短くしたり、ウエイトトレーニングなら回数や重量で強度設定ができます。
しかしパンチというものは、ゲーセンのパンチングマシーンのように数字が出るわけではないので見た目では強度がわからない。『80%の力で1分やれ』とか『100%の力で10秒を10セット』と指示できたらいいですが、どうしてもトレーナーと本人の主観、そして実際の力には差がでてきてしまいます。
この差を埋めるために共通の「客観的ツール」として心拍計を利用します。具体的なメニューは2,3回で紹介しますが、例えば『○○選手は90%から5分キープで5セットレスト88%まで。××選手は96%レスト1分固定で20セット』など、レベルと目的によって個々に練習メニューを設定します。そのため、うちのジムのタイマーは3分/1分(または30秒)の流しっぱなしになっていることはほとんどありませんし、練習時間が2時間を超えることはありません。こう聞くと楽に聞こえるかもしれませんが、強度が非常に高いので信じられないくらいキツイです。もう無理だって思っても心拍計を持ったトレーナーから「175まで。あと3つ・・・あと、2つ!」と言われるし、こちらが苦しい顔をしていても、「まだ動ける数値ですよ。上げて。」と非情な指示が出ます。
心拍計は嘘をつきません。心が折れそうなとき、「体はやれるって言ってるんだ!」と自らを奮いたたせてくれるものなのです。

最後にもう一度言いますが、「格闘技は数字じゃない。」
しかし勉強することを放棄して、耳を閉ざしても意味がない。
いくら完璧に仕上げても、負ける時は負ける。でもチケットを買ってくれた人や、自分を手助けしてくれた人に、なんとなく追いこんだつもりの自己満足な練習をして試合するよりも、最高の練習をしてベストコンディションでリングに上がるのも仕事です。技術は一番大事。そこはトレーナーと二人三脚で伸ばせるでしょう。しかしそれだけではなく、勝つために、ベストなフィジカルでリングに上がろう。

【山田式心拍トレーニング動画】

山田武士
昭和48年2月7日産まれ。足立区西新井にあるJB SPORTSのフィジカルトレーナーとして活躍中。
ボクシングジムの代表でありながら、立嶋篤史に始まり、門馬秀貴、入江群、鈴木悟など、MMAやキックの選手に打撃を教えてきた。その指導力が評判を呼び、UFCで活躍する川尻達也、秋山成勲、高谷裕之、児山佳宏、キック界では寺戸伸近、山本優弥、石川直生・・・・など、名だたるトップ選手達が集い、合同練習が始まる。その集団はいつしかTEAM黒船と呼ばれ、PRIDE、HEROS、DREAM、戦極、修斗、DEEPなど、数々の団体で高成績を収め、年末の格闘技イベントに5年連続出場するなど、格闘技界の一大勢力となっている。選手達はその手腕に絶大な信頼を寄せる一方、豪放磊落な性格に「兄貴」と慕っている者も多い。近年は乳酸や心拍数を基盤とした科学トレーニングを練習に取り入れ、その内容は大学教授をして「研究者のほうが遅れている」と言わしめるほど。

本コラムの執筆者
山田 武士

JB SPORTS
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