【連載】痛みをとる技術【第7弾】

【関節リセットストレッチ】ターゲットは筋肉と筋膜と関節 捻挫のクセを考える

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なぜ怪我がクセになる?
結論から言いますと『治っていないのに治ったと思い込んで動かすから』です。過去の怪我がクセになっているという人は、恐らく『治った』の認識が間違っているのでしょう。『痛みが無くなった』=『治った』ではありません。『本来持っている最低限の機能を取り戻した』=『もう少しで治る』ぐらいの感覚です。
筋肉や靭帯は内部にあって確認できないので、目視できる肌に置き換えて説明します。例えば、肌に切り傷を負ったとします。筋肉で言うと軽く切れた部分断裂です。肌の場合、処置をして放っておけば、裂けていた箇所は徐々に修復され、カサブタの状態になります。カサブタが出来れば、シャワーを浴びても沁みなくなりますし、軽く触れても痛くはないでしょう。筋肉の部分断裂が起こった時も、内部では同じような現象が起きていると推測されます。で、多くの人は、このカサブタが出来た状態を少し過ぎたところで、治ったと認識しているのです。

本当の『治った』とは、どの辺りか?
肌の場合、その主な役割は外敵の侵入を防ぐことです。カサブタであっても、とりあえず膜が張ればOKというところがありますし、自分でカサブタを剥がしてしまった場合、血が出れば「ヤバい!まだ早かった」と分かるから良いのです。しかし筋肉は違います。しっかりとスムーズに伸びて縮みむこと。またその時、重さや速さ、突発的な負荷や捻りにも耐えられる強度と柔軟性が無ければなりません。更に周りの筋肉と連動して、複雑な動きを担ったり、血流やリンパの流れを正常に保ったりもしなければなりません。そして何より肌との大きな違いは、目で見て治った、と確認できないことでしょう。

ではどこで治ったと判断するのか?と言いますと、私がバレーボールで内反捻挫をした時はザックリと5段階に分かれていました。
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1:破壊されてから組織が修復していく過程での痛み。
2:その修復の痛みが、イタ痒いとか、痒い、という感覚になる状態。
3:ゆっくりと慎重に、前後、左右、捻りなどを自分で加え、その動きを確かめる時に感じる痛み。
4:日常生活ではほぼ違和感が無くなる状態。
5:徐々に回数、重さ、スピード、柔軟性など、負荷をかけたトレーニングが出来るようになってくる状態。この5段階目に入って、2回ほどトレーニングを行った辺りで、そろそろ治ってきたかなぁと思う感じでした。

1の段階から、後で紹介する捻挫に関連性の高い筋肉や筋膜はコンディショニングし、その部分での痛みの確認作業は常に行います。その他、怪我直後のアイシングだけでなく、仕事の終わりなど、立ち仕事の後は一度アイシングをしました。また出来るだけ血が足に溜まらないよう、5分でも横になれる時があれば、横になっていました。

ネットで紹介されている捻挫の対応に関して、私が正反対の事をした1つは『固定化』です。私はあえて固定化しませんでした。どのような足の運び、角度、幅、速度、地面の状態だと、患部に痛みが出るのかを知りたかったからです。そして器具を使わずに、自分の筋肉で固定することで、捻挫の時には、どの筋肉が余計に使われ、固くなるのかを知りたかったからです。その時見つけた箇所を日々入念にコンディショニングしました。実際傷めている患部ではなく、そこに関連性の高い筋肉や筋膜の機能を正常に戻すことで、固定化して安静にしているだけよりも断然回復が早まるし、足首の不安定感も早く無くなると私は確信しています。逆に、怪我を治す過程で固定化し、大切にし過ぎることが、2度3度と同じ怪我を繰り返す、クセの原因になっていると私は考えております。
腰痛のところでまた詳しくお話ししますが、今まで正しいとされていることをやってきて、「怪我ってクセになるよねぇ」と言うのが定説になっているのです。でもクセにならない人もいます。その違いは何でしょうか? それを考察して、誰かがこれまでの定説にNOを突きつけなければ、何も好転しません。私の主張なんて間違っていても良いと思っています。他の誰かが同じように疑問を持ち、より正解に近い情報を発信してくれるようになれば、それで痛みや怪我に苦しむ人が減るのです。

足首の不安定感、捻挫クセ改善にお勧めのリリース
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今回のコンディショニングも、写真のように、ボール2個をネットやストッキングで包んだモノを使用します。ストレッチポールでは当たる面が広いので芯を捉えるポイントに入りませんし、ボール1個では不安定で、これまたポイントに当てにくくなります。
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まずは写真のような体勢で、2個のボールで脛を挟むように置き、ゆっくりと体重をかけて圧をあげます。
少し圧を掛けた状態で、脛に沿わせて前後に動かすのですが、中にはほとんど体重を掛けられないような痛みに襲われる人もいるでしょう。その場合は、表面を撫でる程度でも構いませんので、痛すぎないように注意し、慎重に脛の両サイドにボールを走らせてください。20往復ぐらい。弁慶の泣き所だから痛いのではなく、組織が癒着し、筋機能が低下しているから痛いのです。脛部分は回復が早いので、1週間もすれば、痛みの軽減が実感できます。

続いて同じ対背で、膝に近い部分にボールを置き、やや外側に体重を乗せて圧を掛けます。リラックス&深呼吸で30秒。終わったら今度は内側に体重を乗せ、圧を掛けます。同じく30秒。この作業を、膝に近い位置、中間点、足首に近い位置というように、当てる個所を移動させながら行っていきます。
押し当ててイタ気持ち良い状態で、足首をクルクルと回してみると、痛みの信号によって「おー、この筋肉が繋がってるんだぁ」と分かります。また、その作業を行った方が、早く筋機能を取り戻せますので、余裕のある人はお試しください。

脛のサイドを攻める時は、下の写真のようなフォームに変えてやってみると、また違ったイタ気持ち良さが得られます。
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また脛の方だけでなく、ふくらはぎ側をほぐす事も重要です。
脛と同様に、足を挟むようにボールを置き、徐々に圧をあげて、イタ気持ち良い個所を探してください。イタ気持ち良い箇所が見つかったら、そこで足首を慎重に回します。その作業を足首の近くから膝裏まで、ご自身の身体の声を聞きながら行ってください。

これらのコンディショニングは、捻挫からの回復、捻挫クセだけでなく、ランナーのシンスプリント予防にも効果的です。また、健康のため、毎日ウォーキングをしているという方も、恐らくこの部分の筋肉をケアせずに使い過ぎていて、触れば強烈な痛みを発する人もいるかと思われます。歩いたり、走ったりしているのに、足首の不安定感や、冷えや浮腫みを感じる人にも、是非とも試して欲しいコンディショニングの1つです。
次回は、以前少し話した、回復には3カ月掛かる、というその理由を解説していきます。

本コラムの執筆者
生西 聖治

ボディメイク&ボディケアハウス
代表:生西 聖治
一般社団法人日本トレーナー協会代表理事

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