【連載】痛みをとる技術【第2弾】

【関節リセットストレッチ】ターゲットは筋肉と筋膜と関節

スタジオ座禅 (1)
一般的なストレッチ
一般的にストレッチとは、コリ硬まってしまった筋肉を伸ばし、本来持っていた柔軟性や弾力性を取り戻してやるエクササイズです。あるべき筋肉の状態を取り戻す事で、血流やリンパの流れが改善され、栄養素や酸素の運搬、老廃物の排出が円滑になり、1つ1つの細胞が活性化されます。結果的に基礎代謝量が上がり、それがダイエット効果をもたらしたり、美肌効果や免疫力の向上に繋がったりします。逆に筋肉がコリ硬まって血流が悪くなった末端の細胞は、浮腫みやすかったり、脂肪が燃焼されにくく、セルライトの原因になったりします。と、ここまではストレッチの入門編です。

身体の状態

日常生活での動作や姿勢の癖、また過去に負った怪我の経験などから、ある個所の組織同士は癒着をおこし、普通のストレッチでは十分に伸ばされていない状態になっています。その癖がついてしまった期間や、癒着している期間が長ければ長いほど、それをもとの状態に戻すのに必要な時間も長くなります。それを放置しておくと、医者に行っても痛み止めと湿布で、あとは様子を見てくださいと言われる、原因不明の慢性腰痛や肩凝り、膝の痛みなどとして表れるのです。

痛みを我慢してトレーニングしていた経験

私自身、若い頃は適当にしかストレッチをせず、それが災いし、椎間板ヘルニアからのギックリ腰、足首とアキレス腱、膝、股関節、腹筋、胸、肩、肘、手首、肩甲骨、と、ほぼ全身の怪我を経験してきました。これはさすがにヤバいと思って真面目にストレッチを始めたのですが、症状は思うように回復せず、同じ怪我を何度も繰り返しました。中でも年に1回から2回おこるギックリ腰は酷く、痛みで数分も立っていらない状態になりました。それでいよいよ手術だと覚悟を決めて病院に行ったのですが、結果的に手術は行いませんでした。私は椎間板ヘルニアが悪化し、神経を圧迫して痛みが生じていると思っていたのですが、そうではなかったのです。その時の先生は「医者もなんで痛みが出ているかまだ分かっていないんです」と話してくれました。実際、現在でも腰痛の約85%は原因不明で、ヘルニアだから痛みが出るとは限らず、ヘルニアの手術をしたからと言って痛みがとれるとも限っていません。

知識と経験と推測から見えた、痛みを取り除く方法

では何が痛みとして表れているのか? と聞かれれば、細胞の慢性的な低酸素状態と低栄養状態。これが痛みの原因の1つではないかと私は考えています。いくら筋肉をつけても、凝り固まって血流量が減少した筋肉では痛みが生じます。逆に老化で筋肉量が減少した人の多くも原因不明の痛みを訴えます。これは炎症や神経の圧迫とは別に、細胞に十分な酸素と栄養素が運ばれていないと発せられる痛みによる信号ではないかと考えるとしっくりくるのです。ではどうすればその痛み信号を軽減できるか?と考えれば答えは簡単です。従来の筋肉が持っている、伸びて縮むという働きを、取り戻してやればいいのです(そうすることが普通のストレッチでは難しい理由は後ほど書いていきます)。

手順としては、まず深部から体温を上げる。筋膜リリースやトリガーポイントのリリースで細胞の癒着を取り除く。静的なストレッチと関節の動きと遊びを意識したストレッチをかける。最後に眠っている神経系の働きを取り戻す全身のエクササイズや、無意識に避けているような苦手な動きを、低負荷で数回行ってやる。この一連の作業を繰り返し行ってやる事で、これまで血流が滞っていた細胞にも血が通うようになり、痛みが徐々に軽減していきます。

論より証拠 1分で効果の分かるリリース1例

リリースにはストレッチポールか、右のようにボール2個をネットやストッキングで包んだものを使用します。ボール1個でも出来ますが、2個の方が圧倒的に安定しています。
まさに商品
ストレッチポールとボール2個の大きな違いは、その当たる面の広さでしょう。ポールの方は当たる面が広いので、一度に広い部分のリリースを行えますが、圧は低くなります。また脛やお尻など、筋肉が細い箇所や点で当てたい個所などはポールよりもボール2個の方が的確に当てられるでしょう。ただし、ボール2個は点で当たる分、圧が高くなるので、強く当てすぎないように注意が必要です。強い刺激が好きな人もいるかと思いますが、強すぎる刺激は細胞を破壊し、翌日の揉み返しを引き起こしますので、おススメはしません。

お尻の筋膜リリース、トリガーポイントのリリース

腰痛、坐骨神経痛、脚の痺れなどに有効。

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お尻の筋肉はリリースをして実際に効果を実感しやすい個所の1つです。

論より証拠で、お尻の片側の下にボールを入れ、1分間ゴロゴロ動かしてみてください。大切なことは、自分でイタ気持ち良い個所と強さを見つけることです。痛みを感じる個所が無ければゴロゴロする必要はありません。痛すぎる刺激は逆に筋肉を緊張させてしまうので注意が必要です。とりあえず片側だけ1分間ゴロゴロし、一度立って歩いてみてください。足の運びやすさや腰の軽さで、ゴロゴロした方と、していない方とでは雲泥の差があるかと思いますが、いかがでしょうか?

その後、下写真のようなお尻の筋肉を伸ばすストレッチをかけてやります。足を乗せる台が無ければ、床の上で行っても大丈夫です。お尻の引く位置や膝の角度、腕を伸ばす方向などによって伸び感が変わってきますので、イタ気持ち良い体勢を自分で探します。
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お尻の筋肉は、大殿筋、中殿筋、小殿筋、梨状筋など、その他いくつもの筋肉が何層にも重なって形成されています。その全てを1つの決められたストレッチポーズだけで伸ばすのは難しいのです。またボールでゴロゴロ転がすことで仙腸関節や恥骨結合部に、ほんの少しの遊びが生まれます。元々大きく動くような関節ではありませんが、周りの筋肉にギューっと圧迫され固められた状態と、強度と柔軟性を兼ね備えて、自由に伸び縮みの利く筋肉に囲まれた状態とでは、その周辺への血流量や、関節が吸収できる腰への負担の度合いも変わってくるのです。それが痛みを発するかどうかに大きく関わってくると考えます。

単に筋肉を伸ばすだけのストレッチでは、その真の効果の30%程度しか享受できていません。ストレッチをしているのに効果が表れないという人は、筋膜リリースやトリガーポイントのリリースを取り入れてみると好転の変化が得られると思います。柔軟性を取り戻してやる事で大切なことの1つは『頻度』です。1回で2時間やったからといって、それで治る事はありません。1回の時間は5分で十分ですので、時間を見つけては1日に2回3回と行い、最低でも3カ月はやり続ける覚悟で臨んでください。長い人生のたった3カ月です。一生痛みを背負って生きるか、ここで断ち切るか。その選択の自由はみなさんにあります。

本コラムの執筆者
生西 聖治

ボディメイク&ボディケアハウス
代表:生西 聖治
一般社団法人日本トレーナー協会代表理事

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