生と死の境目を知る・・・柔術のタップ(参った)から学ぶ事
柔術にはタップという言葉・動作があります。
相手に首を絞められたり、関節を決められた時
自らの負けを認め相手に参ったの合図として、タップを行います。
具体的には相手か自分かマットをパン!パン!と叩いて負けた意思表示をする行為です。
このタップという行為は考えてみれば、相手から参ったを奪う事を目的とする柔術独特のものと言えます。
他の競技では自ら負けの意思表示をし試合が終了する事はなかなかありません。
レフリーや点数により勝敗が決せられる競技がほとんどです。
(※今のスポーツとしての柔術はポイントでも勝敗は決せられます。)
柔術では練習から頻繁にタップは行われます。
指導者もタップする事をしっかり教えています。
自ら負けを認める行為は他の競技では、試合の途中で諦める事になり、ケガ等のアクシデント以外はなかなか起こらない事です。
では何故、柔術はタップをする様に指導しているのでしょうか?
それは単純にケガや事故をしない為です。
柔術の関節技・絞め技は根性や我慢では耐えられるものではありません。
関節技を我慢すれば、骨が折れたり、外れたり、筋が断裂したりします。
絞め技を我慢すれば、呼吸が出来なくなったり、意識が無くなります。
柔術の技はとてもシビアなものです。
タップという行為はそれらの状態に追い込まれた時にケガや事故が起こらない様に、自ら負けを相手に合図します。
つまりタップという行為をしなければ限りなく死へ近づく事になるのです。
いわば生と死の境目をタップにより相手に知らせている事になります。
この生と死の境目を柔術は練習の中で自然と学んでいるのです。
自らタップをする方はこう思います「このままでは、腕が折れてしまう。呼吸が出来なくなってしまう。
逃げられない、タップしなければ自分が危ない!」と。
では逆に技をしかけている方はどうでしょう?
実は技を仕掛けている方も相手の生と死の境目が分かるのです。
「このまま関節に圧力をかければ、相手の腕は折れるな、このまま絞めつづければ相手は気絶するな、我慢しないでタップしてくれよ」と
柔術をする事は勝つ方も負ける方も生と死の境目を無意識に感じ学んでいる事になるのです。
実はこれはとても大切な事ではないかと思います。
今も昔も悲しい事件・事故が続いています。
イジメ問題等ではよく集団で一人を遊び半分にからかい自殺に追い込んだり、傷つけ殺してしまったり・・・、
男女間・親子間のトラブルでも、ついカッとなりパートナー、子供、親の命を奪ってしまったり・・・、
些細なことで争いになり、力の加減も分からずに暴力で人に危害を加えたり・・・
加害者は言います。
「殺すつもりは無かった」「まさか死ぬとは思わなかった」と・・・